研究活動


 研究概要

 
 当研究室では、主に以下の3つの研究を行っています。
  1. 金属系エコマテリアルに関する研究
  2. バイオマテリアルに関する研究
  3. 岩石の破壊や間隙構造に関する研究

1. 金属系エコマテリアルに関する研究

 自動車など輸送機器の軽量化が強く求められています。そのため、アルミニウム、マグネシウム、鉄鋼、カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)など様々な材料を適材適所で使用するマルチマテリアル化が世界中で進められています。このマルチマテリアル化を実現するには、種類が異なる材料を接合する異種接合(あるいは異材接合)が技術的課題となっており、その中でも特に金属と樹脂の接合は困難な課題となっています。
 当研究室では、新しい金属接合法としてめっき接合を開発しました。めっき接合とは2枚の金属板の間にめっきを施すことで接合する方法です(図1)。このめっき接合は溶接などと異なり高温にする必要がなく、室温で接合できることが特徴です。アルミニウム合金をめっき接合したところ、母材破断しました。このことから、めっき接合強度はアルミニウム合金の強度より高いことがわかります。

図1 めっき接合

 このめっき接合を、CFRP/アルミニウム合金の異種接合に適応しました(図2)。その結果、約140MPaの高い接合強度が得られました。この値は既存の接合法による接合強度(=30〜50MPa)の3倍以上です。さらに、アルミナ/アルミニウム合金の異種接合にも成功しました。このように、めっき接合は異種接合に適した新しい接合法です。この新しい接合法を使って、マルチマテリアル化が進んでいくことが期待されます。

図2 CFRP/Al合金の異種接合

 また当研究室では、はんだ接合の代替として筆めっき接合に取り組んでいます。筆めっき接合は、微小な接合に適しためっき接合法です。銅線を筆めっき接合したところ、220MPaという高い接合強度が得られました。これははんだ接合強度の4倍以上の高い値です。さらに、はんだ接合で問題となるエレクトロンマイグレーションも生じませんでした(図3)。以上のように、筆めっき接合ははんだ接合に代わる新しい接合法として注目されています。

図3 筆めっき接合強度

2. バイオマテリアルに関する研究

 当研究室ではこれまでに、スーパーキャパシタ等エネルギー材料としてナノポーラス金属(図4)の研究を行ってきました。最近、ナノポーラス金属がバイオマテリアルとしても画期的な特性を示すことを見出したことから、バイオマテリアルとしての研究を進めています。例えば、大腸菌等有害な微生物をナノポーラス金に乗せるだけで壊死させることができます(図5)。この優れた抗菌性は、ナノポーラス金表面と生体分子の相互作用に起因しています。分子動力学シミュレーションやモンテカルロシミュレーション、第一原理計算に加え、深層学習や深層強化学習等最先端の機械学習を駆使し(図6)、ナノポーラス金表面と生体分子の相互作用を解析し、ナノポーラス金属による特異な現象の解明に取り組んでいます。

図4 ナノポーラス金
図5 ナノポーラス金による大腸菌の壊死
図6 深層学習によるタンパク質の構造解析

 また最近では、3Dバイオプリンター等による細胞組織の創製に取り組んでいます。図7は3Dバイオプリンターで作製した人工血管です。このように、これまで当研究室で蓄積してきた材料やモノづくり技術をバイオに展開し、工学的アプローチで3次元細胞組織の創製に取り組んでいます。

図7 3Dバイオプリンターで作製した人工血管

3. 岩石の破壊や間隙構造に関する研究

 岩石に関する研究は、資源開発や地下空間の安全な利用に資するための研究である。
 岩石中に存在する割れ目や間隙を認識することができれば、岩石の強度や浸透性などの性質をより正確に評価することが可能になります。ところが、割れ目や間隙そのものは空間なので、認識が非常に困難であったり、誤認したりすることがあり、評価は容易ではありません。そこで、当研究室では、割れ目や間隙に蛍光剤を添加した樹脂を浸透、充填させ、紫外線照射のもとでこれらを顕在化し観察する方法(蛍光法)を考案しました(Nishiyama & Kusuda, 1994)。この手法を用いると、割れ目や間隙の部分の認識がより確実となり、コンピュータによる画像解析にも適しています。
 当研究室では、この手法を用いて様々な岩石の物性評価や破壊メカニズムの解明に取り組んでいます(図8)。具体的には、シェールガス開発に用いられる水圧破砕の破壊メカニズムの解明や高レベル放射性廃棄物の安定した地層処分に向けた解析を行っています。

図8 一軸圧縮強さ程度まで載荷された花崗岩内に発達する割れ目の進展状況(破壊メカニズムの解析)
割れ目が紫外線照射により青白色に発光して観察される。